脱炭素経営とは?企業価値向上と持続的成長を実現する戦略
コラム
2026.01.17
地球規模での気候変動への懸念が高まる中、企業の活動が環境に与える影響は、もはや無視できないものとなっています。
単に社会貢献活動として環境問題に取り組む時代から、企業の持続的な成長のために、気候変動対策を経営の中核に据えることが求められる時代へと移行しています。
このような背景から、多くの企業が「脱炭素経営」という新たな戦略に関心を寄せています。
脱炭素経営とは何か
気候変動対策を企業経営に統合すること
脱炭素経営とは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指し、気候変動対策を企業経営の意思決定プロセスや事業活動全体に組み込む考え方です。
具体的には、CO2排出量削減目標の設定、Scope1(直接排出)、Scope2(間接排出)、Scope3(その他の間接排出)といった自社の排出量の算定と管理、再生可能エネルギーへの転換、サプライチェーン全体での排出量可視化と削減策の実施などが具体的な取り組みとして挙げられます。
これは、単に環境保全活動として植林や清掃活動を行うといった従来のCSR(企業の社会的責任)活動とは異なり、事業の存続と成長のために不可欠な要素として、経営戦略の根幹に据えられるものです。
例えば、製品のライフサイクル全体でのCO2排出量を計算し、その削減策を事業計画に落とし込むといったアプローチが取られます。
環境課題への対応を経営戦略に組み込むこと
企業は、事業活動における環境負荷の低減を、単なるコストや義務として捉えるのではなく、持続的な成長のための機会と位置づけることが求められています。
環境負荷低減は、例えば省エネルギー技術の導入による運用コストの削減や、環境配慮型製品の開発・提供による新たな市場の開拓といった、直接的な経済的メリットに繋がる機会となり得ます。
環境課題への戦略的な対応は、消費者からのブランドイメージ向上や、優秀な人材の獲得・維持にも寄与し、結果として企業のレピュテーションを高め、変化の激しい市場環境下での競争優位性を確立することに繋がります。
環境課題への対応を経営戦略に統合することで、企業は社会からの信頼を高め、変化する市場環境に適応していくことが可能になります。

なぜ企業は脱炭素経営を進めるのか
社会的要請と国際目標達成のため
パリ協定で定められた世界的な目標や、各国が掲げるカーボンニュートラル宣言といった国際的な枠組みへの対応は、企業にとって不可欠となっています。
2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが国際社会の共通目標となりました。
これを受け、日本政府も2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。
こうした国際的な枠組みや各国の政策動向、例えば炭素税の導入や排出量取引制度の拡大などは、企業活動に直接的なコスト増や事業機会の喪失といった影響を与える可能性があります。
そのため、企業はこうした社会的要請に応え、将来的なリスクを回避するために脱炭素経営への取り組みを加速させています。
これらの国際目標や国内政策の動向は、企業活動に直接的な影響を与えるため、社会的要請に応える形で脱炭素経営への取り組みが進められています。
企業価値向上とリスク低減の必要性
脱炭素経営を推進することは、投資家や金融機関、消費者からの評価を高め、企業価値の向上に繋がります。
脱炭素経営への積極的な取り組みは、環境問題への意識が高い投資家や金融機関からの評価を高め、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)を呼び込みやすくなるなど、資金調達における有利さに繋がります。
また、企業のブランドイメージや社会的信頼性を向上させ、結果として企業価値の向上に貢献します。
一方で、気候変動に起因する物理的リスクや、将来的な炭素規制強化に伴う事業リスクを低減する効果も期待できます。
気候変動による異常気象の頻発化・激甚化といった物理的リスクや、将来的な炭素規制の強化、化石燃料への依存度が高いビジネスモデルからの転換を迫られるといった移行リスクは、企業の存続そのものを脅かす可能性もはらんでいます。
これらを低減することは、事業継続性の観点から極めて重要です。
取引先との関係性においても、サプライチェーン全体での脱炭素化が求められるケースが増えています。
大手企業を中心にサプライチェーン全体での排出量削減を取引先に求める動きも広まっており、取引先との関係維持のためにも脱炭素化は不可欠となっています。

脱炭素経営が企業にもたらす利点
資金調達における評価向上
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視するESG投資の観点から、脱炭素経営に取り組む企業は、投資家や金融機関からの評価が高まります。
ESG要素を重視する投資家や金融機関は、企業の長期的な持続可能性を評価する上で、脱炭素経営への取り組みを重要な指標としています。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った気候変動関連リスク・機会の情報開示、SBT(科学的根拠に基づいた排出量削減目標)の設定、RE100(事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際イニシアチブ)への参加などは、企業が気候変動に対して適切に対処していること、そして将来的なリスク管理能力が高いことを示す客観的な証拠となり、投資家や金融機関からの信頼を得やすくなります。
これにより、低利での融資や、ESG債などの新たな資金調達手段へのアクセスが容易になる可能性があります。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やSBT(科学的根拠に基づいた排出量削減目標)、RE100(再生可能エネルギー100%達成)といった国際的な枠組みへの参加は、資金調達における競争力を高める要因となります。
持続可能な成長機会の創出
脱炭素化への取り組みは、省エネルギー化によるコスト削減や、再生可能エネルギーの活用、新たな環境技術の開発など、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があります。
脱炭素化への移行は、単なるコスト増にとどまらず、新たなビジネスチャンスを生み出す原動力ともなり得ます。
例えば、徹底した省エネルギー化は、LED照明への切り替えや高効率設備の導入、断熱性能の向上などを通じて、電気代や燃料費といった運用コストの大幅な削減に直結します。
また、自社工場やオフィスビルへの自家消費型太陽光発電システムの導入や、再生可能エネルギー由来の電力購入契約(PPA)への切り替えは、エネルギーコストの安定化や、環境負荷低減に貢献します。
さらに、カーボンリサイクル技術(CCUS)や水素エネルギー関連技術、電気自動車(EV)、バイオプラスチックといった、脱炭素社会の実現に不可欠な新たな環境技術や製品、サービスの開発・提供は、成長市場への参入を可能にし、企業の競争力を強化します。
近年、消費者の環境意識の高まりとともに、こうした環境配慮型製品やサービスへの需要は世界的に増加傾向にあり、企業にとって大きな成長機会となっています。
環境配慮型製品やサービスへの需要が増加する中で、こうした機会を捉えることが、企業の持続的な成長に繋がります。
まとめ
脱炭素経営は、現代の企業にとって、単なる環境対策を超えた、不可欠な経営戦略へと進化しています。
脱炭素経営は、もはや選択肢ではなく、全ての企業が取り組むべき喫緊の課題であり、経営戦略の中核に位置づけるべきものです。
国際社会からの要請に応え、企業価値を高め、将来のリスクを低減させるだけでなく、新たな事業機会を創出する可能性も秘めています。
国際的な目標達成への貢献、社会からの信頼獲得、そして将来的なリスク回避はもとより、イノベーションを促進し、新たな市場を開拓することで、持続的な成長を遂げるための強力な推進力となり得ます。
気候変動という地球規模の課題に対し、企業が主体的に、かつ戦略的に取り組むことは、持続可能な社会の実現と、自社の長期的な成長の両立を目指す上で、極めて重要と言えるでしょう。
気候変動という地球規模の難題に対して、企業がその責任を果たしつつ、主体的に、そして戦略的に行動することは、地球環境の保全と、企業自身の長期的な繁栄という、両輪の実現に向けた羅針盤となるでしょう。